HSPだからこそできること/『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』

パーティーに誘われて来てしまったけど、にぎやかすぎて耐えきれずトイレにこもってしまう、あるいは気づかれないように帰ってしまう、そんな方はいませんか。

世の中には5人に1人の割合でHSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人)といわれる人がいるそうです。

本書の巻頭に「HSP自己診断テスト」というものがあり、60点以上ならHSPである可能性があるということですが、受けてみた結果、私は2倍近い点数を弾き出してしまいました。ものすごく敏感です。

本書の概要

本書の著者、イルセ・サンは牧師・心理療法士で、自身もHSPであるそうです。本書では、HSPとはどのような人のことなのか、HSPが抱えやすい心の問題、HSPが人とうまく付き合う方法、自分とうまく付き合う方法などについて書かれています。

自分がおそらくHSPであるということは何年も前から認識していたのですが、そんな自分としっかり向き合いたいと思い、本書を手に取りました。

HSP自己診断テスト

冒頭でご紹介した「HSP自己診断テスト」は、全部で48項目あり、

  • 0点:当てはまらない
  • 1点:ほとんど当てはまらない
  • 2点:少し当てはまる
  • 3点:ほぼ当てはまる
  • 4点:完全に当てはまる

の5段階で点数を付けていきます。

どういうテストであるかをお伝えするため、私が何の迷いもなく「完全に当てはまる」と即答したもののうちいくつか以下に記します。

  • 美しい音楽を聴くと、興奮する
  • 日々、どんな失敗が起こりうるか予測して対応策を考えることに、多くの労力を費やしている
  • ほかの人にとってはささいに思えることにさえ、打ちのめされてしまうことがある
  • 1人になって休憩する時間がないまま他人とずっと2、3時間以上も一緒にいなくてはならないと、疲れ果ててしまうことがよくある
  • 緊迫した空気が流れていると、その場から離れたくなる
  • 誰かの怒りを感じると、たとえ自分に向けられていなくても、ストレスになる
  • ほかの人の痛みが、自分の神経の奥深くに入り込んでくる
  • 不愉快な驚きや誤解を避けるために、いろいろと手を尽くす
  • ほかの人よりも、考えることに時間を使う
  • 美しい自然を見ると、心のなかが歓喜の声でいっぱいになる
  • 仕事中に誰かに監督されていると、ストレスを感じる
  • 1人の時間を楽しめる

こんな感じです。「結構当てはまるかも」と思った方は、HSPの可能性があります。

「5人に1人」というのが多いと感じるか少ないと感じるかは人によると思いますが、私の場合、マイノリティだったんだとわかったときは、妙に納得感がありました。

私は特に人の「怒り」という感情に弱いです。お店や電車の中などでいらいらしていそうな人が近くにいるだけで、その場から立ち去りたくなります(可能なら立ち去ります)。

たとえば飲食店で、店員さんを呼んでいるのになかなか気づいてもらえないお客さん。その人の苛立ちを想像してしまい、気が気でなくなります。新人スタッフが先輩に注意されていたり、注意されていなくても不安そうに仕事をしていたり、またはその新人に不慣れな接客をされたお客さんが不快そうにしている様子なんかが目に入ると、もう耐えられません。残りの食べ物を大急ぎでかき込んで逃げるように店を出ます。

HSPだからこそできること

80%が非HSPという世の中では、HSPの人は生きづらさを感じることが多いと思います。

たしかに今の社会では、HSPに典型的な“控えめで物静かにゆっくり物事を熟慮するタイプ”よりも、外交的でタフな人たちのほうが、「健康的で価値がある」とみなされる傾向があります。

イルセ・サン『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』

どうしてもHSPの欠点ばかり注目されがち(自分でも注目しがち)ですが、HSPは恐怖などの悪い面に対してのみでなく、喜びなどの良い面に対しても敏感です。本書ではHSPの能力について多く記述されています。

HSPは大いなる空想力と、物事を生き生きと思い描く想像力を備えていて、外界から得た情報を元にさまざまな思考や空想を広げます。

イルセ・サン『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』

HSPは共感力が高く、他人に感情移入することができます。

そのため、相手の気持ちを察知することができ、とても気が利きます。HSPの多くが、サービス業や人をサポートする仕事に身を置き、相手から感謝されるようです。

イルセ・サン『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』

自信はあるけど自尊心は低い

「HSPが抱えやすい心の問題」という章には、参考になるものが多くありました。

自分に高い基準を設けてしまうたいていの要因は、自尊心が低いことにあります。

高い基準は、自尊心の低さを補うために設けたもので、愛される価値が自分にあると信じる気持ちが弱ければ弱いほど、それを取り返すための戦略をとるのです。

イルセ・サン『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』

私は常々、自分に自信があるのかないのか、自尊心が高いのか低いのか、自分でもよくわからない、矛盾していると感じていました。自分に自信がないと思っている、でも何事も努力すればできるような気がする——。

それが本書を読んではっきりしました。自信はあるけど、自尊心が低いのだと。

自尊心が高い人で、自信がない人はめったにいません。(中略)

その逆で、自信満々な人の自尊心が低いことはよくあります。自分のことをあまりよく思っていない人は、それを補うために、ほかの人よりも懸命に努力し、さまざまな分野で優秀であろうとします。

イルセ・サン『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』

ほかにもこの章には、「恐怖心を感じ、憂鬱になりやすい」「怒りをうまく放出できない」「「喧嘩したい」という感情を持ち合わせていない」など、「これってそのまんま私だな」と共感できる点がいくつもありました。

パーティーはそのままに

最後の章にこのような記述がありました。生きる勇気をもらったというと大げさですが、自分らしくいてもいいんだという気持ちになれました。

私たちは傷つきやすいばかりではなく、世界で必要とされるいくつかの才能を備えています。(中略)私たちには私たちの種が生き残るのに不可欠な資質が備わっています。

この考え方によって、敏感な神経を持つことが一層の市民権を得るようになります。あなたはホラー映画を観に映画館に行こうという誘いを断っていいのです。過度に刺激を受けてしまうことを理由に、丸1日出掛けるのを断ったって、パーティーから早く帰ったって構わないです。

イルセ・サン『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』

この文章を読んでいて、私はビートルズの「I Don’t Want to Spoil the Party(邦題:パーティーはそのままに)」という曲を思い出しました。「パーティーを台無しにしたくないから帰る、浮かない顔を見せたくないから消えるよ」というような内容の歌です。HSPのテーマソングに認定します。


本書を読んだことで、これまであまり意識していなかったHSPの良い面を知ることができてよかったです。また、巻末に載っている「HSPのためのアイデアリスト」がこれから生きていくうえで役に立ちそうだなと思いました。ちなみに、このように文章を書くことも、HSPに喜びや心の健康をもたらすそうです。心に良いことをどんどん続けていこうと思います。

  • URLをコピーしました!