さて、今日ももちろんコーヒーを淹れるわけですが、以前、粕谷哲さんのドリップレシピをご紹介しました。
今日は、第15代ワールド・バリスタ・チャンピオン、井崎英典さんの『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える世界一美味しいコーヒーの淹れ方』という本のとおりに淹れてみたいと思います。私がコーヒーを淹れる際毎回コーヒースケールを使うようになったのは、図書館で借りた井崎さんの著書を読んだことがきっかけです(本書とは別の本ですが)。
ドリップレシピ
本日は中煎りの豆を使います。本書によると中煎りの場合には92℃がいいそうなので、そのとおりに設定します。
井崎さんのレシピではお湯100gに対してコーヒー豆6~8gを使います。幅がありますね。今回はすっきりした感じで淹れようと思うので、6gとしてみます。300gのお湯に対して、18g。
コーヒー豆はブルーボトルコーヒーの「ベラ・ドノヴァン」というブレンドを使います。
ペーパーフィルターをセットしたら湯通しをしてドリッパーをあたためてから、挽いた豆を入れます。ドリッパーの根元を持って揺すり、粉を平らにします。
ドリップは蒸らしを入れて全3回。
まず1投目は全体の20%を15秒ほどかけて注ぎます。今回は300gのお湯を使うので、60g。注ぎ終わったら、粉全体に均等にお湯を行き渡らせるために、ドリッパーを揺すります。
1分経ったら、2投目を同じく全体の20%(60g)注ぎます。注ぐ量を若干増やし、10秒ほどかけて注ぎます。
さらに1分経ったら、3投目を全体の60%(180g)を30秒ほどかけて注ぎます。注ぎ終わったら、1投目と同様、ドリッパーを揺すって粉がドリッパーの側面に張り付かないようにします。
3分~4分の間にコーヒーが落ちきっていれば成功です。
蒸らしは1分
私がこれまでに見たドリップレシピのなかではいちばん長い1分の蒸らし。30秒程度が多いように感じますが、この点について、井崎さんは以下のように語っています。
検証の結果、蒸らしを「約1分」かけて行った場合、粉の表面抽出を促進し、溶解度が劇的に向上することがわかっています。(中略)蒸らし時間を延ばすことで粉の表面から効率よく可溶性固形分を本抽出フェーズで溶解させることが可能だと考えています。結果として、コーヒーはより甘さを増し、舌触りも向上しますので、ぜひ試していただければと思います。
井崎英典『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える世界一美味しいコーヒーの淹れ方』
私は1投目を注ぎ終えた後にコーヒーミルを掃除するのですが、この掃除にだいたい1分近くかかるので、井崎さんの提唱する蒸らし時間がちょうどいいです。
フィルターの壁にお湯を当てる
これもなかなか衝撃的ではないでしょうか。
フィルターの壁にお湯が当たったら、コーヒーの粉と触れ合わずにお湯が抜けてしまうのでは、と思う読者も多いと思いますが、フィルターの壁までお湯を注がないと、フィルターの壁沿いに位置するコーヒーの粉にお湯が触れることはありません。
したがって、しっかりお湯が浸透している中央部分と、お湯が浸透していないフィルターの側面部分で抽出ムラが起こります。
井崎英典『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える世界一美味しいコーヒーの淹れ方』
ここまではっきりと言いきっている方、私はほかに見たことがありません。言われたとおりに壁にお湯をかけてみると、フィルターに粉が残らないのでなんとなく気分はいいです。
粕谷さんと井崎さんの比較
以前ご紹介した粕谷さんのレシピと比較してみました。こうして見てみると違いがあって面白いですね。
粕谷哲さん | 井崎英典さん | |
---|---|---|
豆の重さ | 豆:お湯=1:15 | お湯100gに対して6(~8)g ※豆:お湯=1:16.6(~12.5) |
粒度 | 粗め | 好みの挽き具合 ※抽出時間が3分に満たない場合にはより細かく、4分を超える場合にはより粗く設定 |
お湯の温度 | 浅煎り:93℃ 中煎り:88℃ 深煎り:83℃ | 浅煎り:94℃~96℃ 中煎り:92℃ 深煎り:88℃~90℃ |
お湯の投数 | 5投 | 3投 |
1投目 | 全体の20%注ぐ | 全体の20%注ぐ ※注いだらドリッパーを3回ほど揺する |
2投目 | 45秒経過→全体の20%注ぐ | 1分経過→全体の20%注ぐ |
3投目 | 1分30秒経過→全体の20%注ぐ | 2分経過→全体の60%注ぐ ※注いだらドリッパーを3回ほど揺する |
4投目 | 2分10秒経過→全体の20%注ぐ | |
5投目 | 2分40秒経過→全体の20%注ぐ | |
抽出時間 | 3分30秒 | 3分~4分 |
違いはありますが共通点も多いようです。たとえば粕谷さんは4:6メソッド(使うお湯の量を40%と60%に分け、40%で味を、60%で濃度を調整する方法。基本レシピは上記の表)を提唱していますが、その調整例として、3投目を全体の60%とする方法も粕谷さんの著書で紹介されています。これはそのまま井崎さんのお湯の注ぎ方と同じになります。
おわりに
ふたつのドリップレシピをご紹介しましたが、私の舌ではなんとなく井崎さんのレシピの方がどっしりとした味わいになるような気がします。蒸らしが長いことや、お湯の温度が若干高いことによるのでしょうか。とはいっても、そこまで大きな違いは感じません。どちらのレシピでもおいしく淹れられます。
どちらかといえば、今回ご紹介した井崎さんのレシピの方が、蒸らし時間中にミルの掃除ができたり、お湯を注ぐ回数が少なくて楽だったり、違う湯量のときに豆の重さが計算しやすかったりするので(湯量×6%=豆の重さ)、使う頻度が多いように思います。
最後に、井崎さんご本人が実演している動画が公開されているのでご紹介いたします。ドリップの方法についてわかりやすく解説されているので、ご覧になってみてください。
12月、もうすぐクリスマスですね。小さなクリスマスツリーを眺めながら、いただきます。