生きる目的は毎日変わってもいい/『メメンとモリ』

我が家は絵本であふれかえっておりますが、そのなかにヨシタケシンスケさんの本が何冊かあります。本書『メメンとモリ』はヨシタケシンスケさんが書いた長編絵本で、漢字にふりがながふられていないことから、小学生以上に向けて書かれた作品なのかなと思います。

メメント・モリ(Memento Mori)

メメント・モリとは、「死を忘れるな」という意味のラテン語です。

この本は、「メメン」という女の子と「モリ」という男の子の兄弟が、生きる理由や目的について考える話です。

私も「なぜ人は生きているのか」といったようなことをうだうだと考えながら終わらない思春期を生きているので、本屋で見かけたこの本に惹かれ、購入に至りました。

本書には、

  • メメンとモリとちいさいおさら
  • メメンとモリときたないゆきだるま
  • メメンとモリとつまんないえいが

という3つの話が入っています。

心に残った言葉

「ずっとそこにある」ってことよりも、「いっしょに何かをした」ってことのほうが大事じゃない?

ヨシタケシンスケ『メメンとモリ』

これは「メメンとモリとちいさいおさら」という話の冒頭で、メメンが作った大事なお皿を割ってしまったモリに対して、メメンが言った言葉です。

自分も、うっかりつけてしまった小さな傷のことで何年も悩み続けたり、お気に入りのものほど傷つけないようにあまり使わなくなりがちなので、メメンの言葉がぐさっと心に刺さりました。気に入っているのならたくさん使わないと意味がないですね。

「メメンとモリとつまんないえいが」という話では、つまらない映画を見て「この先も、つまんないことばっかりだったらどうしよう」と不安になっているモリに対して、

得だとか損だとか、生きていることにはほんとはかんけいないんだよ。

たのしくなくちゃいけないわけでも、しあわせでなくちゃだめなわけでもないんだよ。

ヨシタケシンスケ『メメンとモリ』

と、メメンが言います。「じゃあ、人は、なんのために生きてるの?」とモリが尋ね、そこから二人で生きる目的について語り始めます。生きる目的とは何か、イメージと現実のずれの大きさ、いつか命が終わることについて——。

しばらく会話を重ねたあとで、メメンがこのように言います。

「なんのために生きてるのか」のこたえは、まいにちちがっててもいいわよね。

ヨシタケシンスケ『メメンとモリ』

時間がたてば自分も変わっていくし周りの世界も変わっていく、そのなかでそのとき自分が思ったように生きていればいい。頭の中のもやもやした霧を晴らしてくれるような言葉でした。

おわりに

漢字にふりがなはありませんが、話自体は難しくないので、子どもと一緒に読むのもいいと思います。かわいいメメンとモリの絵を見ているだけでも楽しいです。生きることについて、死ぬことについて、自分で考えるいいきっかけになると思います。

難しいことのようだけど、何も難しく考える必要はないのだということに、大人こそ気づくことができるいい本でした。

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